東京都知事選挙で最も話題となったのが、約166万票を獲得した石丸候補の動画戦略です。大手企業を小池百合子氏とするならば、石丸氏は中小・地場企業の立場。YOUTUBEやSNSを活用して短期間で効果を上げた動画戦略は、経営に活かせる側面が大いにありました。
本記事では、政治方針とは切り分けて、大きな注目を浴びた石丸氏の動画戦略に迫ります。また、動画戦略を実際の事業に活用するメリットやデメリット、動画活用のおすすめの方法などを解説します。
石丸氏の動画戦略・効果を徹底検証
政党の後ろ盾のない無所属議員が、160万票以上もの得票数をわずか数週間の短期間で獲得したことに、多くの人が驚きました。この現象はなぜ起こったのか、背景と詳細、政治活動と動画戦略における今後の見通しも含めて解説します。
石丸伸二氏の背景
石丸伸二氏は京都大学経済学部を卒業し、三菱UFJ銀行へ入社、為替アナリストなどの経験を経て、2020年に広島県安芸高田市長に当選しました。その後1期4年市長を務め、2024年7月の都知事選に出馬。今回の都知事選では、1位の小池に続く2位の得票数を獲得しました。
安芸高田市長時代の石丸氏を象徴するのは、居眠り議員に対する「恥を知れ!」発言です。当時からSNSの切り抜き動画(ショート動画)で拡散されていたため、ご存じの方も多いのではないでしょうか。この頃から拡散され始めた率直な政治姿勢が一定の支持を集め、都知事選においても注目の候補の1人に挙げられていました。一方で国政政党の推薦や支持を受けず、政治経験も少ないことから、得票数が伸びないという見立てが一般的。当初は苦戦を予想する声が非常に多い状況でした。
選挙結果
引用:NHKニュース投票日出口調査 「東京都知事選 年代別投票率」
しかし、都知事選では大方の予想を超える165万8363票を獲得。小池百合子氏に次ぐ2位の得票数を集める結果となりました。NHKの年代別出口調査によると、10代・20代のカテゴリでは全体の1位の支持率となっており、30代・40代でも小池氏とほぼ同等の割合を獲得しています。1位の小池氏は約290万票を獲得。特に50代以上の年代での支持数が多さが、小池氏の当選に繋がりました。
年代別の支持状況をみると、10代~40代までの支持率は石丸氏が優勢。50代以上は小池氏の指示が圧倒的です。注目すべきは、たった1ヵ月に満たない短期間で、石丸氏はどのようにして支持を集めたかということ。ここからは、その戦略を紐解きます。
YOUTUBEを活用した巧みな動画戦略
石丸氏はYOUTUBEやSNSなどを活用した、動画に特化した戦略を展開していたことが大きな特徴です。自身のYOUTUBEを開設し、日々の選挙演説や会見の様子をUP。他方で定期的にカジュアルなライブ配信を行って、視聴者からの質問にリアルタイムで答えるなど、多角的な自己表現で共感を増やし、短期間で支持を集めることに成功しました。
また、選挙演説の際には「SNS投稿OK」「撮影・拡散OK」のステッカーを車に貼り、演説に来た観衆に「動画の拡散」を促したのも選挙戦を有利にした戦略のひとつです。拡散を可能にすることで石丸氏を応援するアカウントは徐々に増え、15以上のアカウントが開設されるまでに広がりをみせました。
それぞれの応援アカウントは、演説の切り抜き動画などを作成して配信。広く拡散が行われたことで、トータルの再生数は1億5千万回を越えたと言われています。切り抜き動画は拡散しやすいためSNSとの相性も良く、急速な認知度UPに貢献しました。
動画戦略の重要度は高まっている
石丸氏以外の候補が、YOUTUBEやSNSを積極的に活用していたことは、これまでの都知事選とは異なる点です。小池氏と蓮舫氏もXとInstagramなどを活用し、政治活動以外のプライベートな側面を発信するなど、石丸氏と同様に若い層へのアプローチを試みました。小池氏のXのフォロワー数は90万人以上、石丸氏のYOUTUBE登録者数は30万人以上と、政治のシーンでもYOUTUBEやSNSの重要度が、非常に高まっていることがわかります。
今回の都知事選では、石丸氏の政治活動資金の集め方も注目されました。石丸氏が集めたネット献金は、なんと約3億。これらのほとんどは、YOUTUBEなどでのライブ配信を視聴した際に、ネットを介して送金できる「投げ銭」で集めたものです。約3億という金額の大きさをみても、動画戦略のパワーを感じられるのではないでしょうか。
「投票」や「投げ銭」など、視聴者の行動を促すことができるのも、動画戦略の力です。視聴した人をアクションに導く動画戦略は、会社運営や事業の力になります。まずは動画戦略に必要な基本的な知識だけでも、理解しておくことをおすすめします。
動画活用が効果的な用途
都知事選で力を発揮した動画戦略は、事業にも幅広く活用できます。まずは、代表的な動画活用の用途をご紹介します。
集客
YOUTUBEやSNSで動画配信することで、広く集客を行うことができます。自社HPなどから読み取れる企業の歴史や実績とは別に、商品やサービスの詳細や想いを伝えることで、依頼しやすい仕組みづくりをすることが可能です。検討している側に対して有益な情報を発信できれば、人的コストを抑えた効率の良い集客を行うことができます。質の高い動画は「24時間稼働する有能な営業職」となり得るでしょう。
ブランディング
動画の定期的な配信やHPに貼り付けての活用は、組織のブランディングとしても有効です。これまではTVCMや広告を活用した自社ブランディングが一般的でした。しかし、動画を活用してブランディングを行えば、より自由度高くコストを抑えて発信することができます。目的に合ったブランディングを確立することができれば、集客効果や採用力を格段に向上させることができるでしょう。
採用
採用を目的とした動画戦略も、ぜひ取り入れたい手法のひとつです。採用難が進む現代では優秀な人材の獲得競争が激しく、採用力の強化が非常に大切になってきています。動画配信を活用すれば、政治家と同様に組織のさまざまな魅力を発信することで、入社志望者を増やすことが可能です。動画戦略に精通したマーケティングパートナーをみつけられると、より短期間で効果的に採用力をUPすることができるでしょう。
動画戦略を活用するメリット
企業が動画戦略を活用するメリットは、非常に沢山あります。なかでも代表的な3つのメリットを開設します。
広告のコストを削減できる
動画戦略を通して発信力を高めることで、営業や採用に必要な広告費を抑えることができます。たとえば、紙広告やCMを動画での発信に変更することで、外注していた費用を大幅に削減することも可能です。既存媒体と同等の発信力をつけるまでには、登録者を増やすなど一定の期間が必要になりますが、長期的な視点で考えると継続したコストカットに繋がるでしょう。
営業力・採用力のUPができる
動画戦略を活用した商品のプロモーションや採用動画の発信などを行えば、営業力や採用力を向上させることができます。YOUTUBE・Instagram・Tiktokなど活用する媒体を工夫することで、狙うターゲットへ伝えたいメッセージを訴求することも可能です。どのような側面を発信すれば購買や応募に繋がるかを事前に考え、自社にあった発信スタイルを構築することが非常に大切になります。
自社のイメージを確立できる
動画戦略を通して発信力が高まれば、自社のゆるぎないイメージを確立することが可能です。さまざまな価値観や意見がある昨今では、外からのイメージに左右されない企業アイデンティティーの確立も重要だといえます。良いイメージの訴求はもちろん、いわれのない誹謗中傷などから組織を守ることで、社員を守り、安定した経営の助けにもなります。効果的なブランディングができれば、集客や採用についても有利に進めることができるでしょう。
動画戦略を活用するデメリット
では最後に、動画戦略を活用する際の代表的なデメリットを解説します。
一定の知識が必要
動画戦略の実行には、マーケティングや動画作成など一定の知識が必要になります。伝えたい内容を的確に伝えるためには、動画の設計やコンテンツ作成の技術は重要です。意図しないメッセージが伝わるとマイナスブランディングとなるため、逆効果を招いてしまいます。動画活用を始める際は、実行と計画に携わる人材の確認から始めることが非常に大切です。
効果に時間が必要な場合も
動画の活用方法によっては、期待する効果がでるまでに一定の時間がかかる場合があります。たとえば、自社YOUTUBEチャンネルで広く情報を発信し、集客や採用に繋げるためには、ある程度の登録者が必要です。SNSなどで切り抜き動画やショート動画をなどを発信し、複数媒体で登録者を集めるなど、一定の準備期間が必要になることを覚えておきましょう。もちろん、即効性のある動画活用も可能ですが、その場合は専門的な知識や経験も求められます。短期的な効果を得たい場合は、専門知識のある外注先への依頼を視野に入れた計画が良策です。
外注の際は費用が必要
動画マーケティングなどの専門知識をもつ外注先を活用する場合は、動画戦略立案~運用までの依頼費が必要になります。初めての動画運用の場合は外注もおすすめですが、費用がかかることを見込んでおくことが大切です。外注には費用がかかりますが、依頼先を間違えなければ自社運用よりも効果は早くでます。できるだけ早く集客や採用に結びつけることで、コストを越える成果を得ることもできます。ライバルが少ない今のうちに、早めの着手をおすすめします。
動画戦略で組織のさらなる成長を
今回は政治方針とは切り分けて、石丸氏の動画戦略を分析し、動画戦略を実際の事業に活用するヒントを探りました。政党の応援もなく、知名度を短期間で伸ばした石丸氏の動画戦略は、中小・地場の企業で参考にできる部分が非常に沢山あります。誰でも簡単に始められる動画戦略を、組織のさらなる成長にお役立てください。
動画戦略の計画・実行をお考えの際は、私たちnora株式会社へのご相談も可能です。YOUTUBEやWEBを活用した企業ブランディングや広告戦略など、中小企業を中心に総合的なマーケティングサポートを提供しております。より効果の高い戦略立案や質の高い動画制作など、組織に合わせた幅広いサポートが可能です。興味をお持ちいただいた際は、ぜひお気軽にご相談ください。