兵庫県知事選からSNSの力を紐解く。自社事業に活かすヒントとは?

2024年11月に実施された兵庫県知事選挙は、SNS対TV・新聞のメディア対決とも呼ばれ、全国的にも大きな話題を呼びました。投票率も、これまでを大きく上回る55%を越えるものに。大バッシングから逆転当選に至った背景には、斎藤知事を支持するSNSの力がありました。

本記事では政治動向には触れず、SNSの影響力に目を向けて、兵庫県知事選挙で起きた事象から、SNSの力を事業に活かすヒントまでを解説します。

話題となった兵庫県知事選とは?

兵庫県知事選挙の結果としては、斎藤元彦氏が当選を勝ち取りました。これまでの体制を改革したい斎藤氏と、現体制継続を打ち出す稲村氏の一騎打ちの構図。約13万7千票の差を生んだ理由のひとつには、SNSの力があったと言われています。

SNS対オールドメディアの選挙

兵庫県知事選挙が行われるきっかけとなったのは、兵庫県議会の斎藤氏に対する不信任決議による失職です。現職の際に行ったとされるパワハラなどの疑惑により失職となった斎藤氏の、出直し選挙として実施されました。失職当時のTV・新聞をはじめとするメディアでは、斎藤氏に掛けられた疑惑は断定する形で紹介され、視聴者から斎藤氏に対する大きなバッシングが生まれていました。

一方でバッシングの裏では、SNSやWEBメディアを中心に斎藤氏のこれまでの取り組みや、政治方針などの良い面が話題に。なかでも既存体制の改革を目指す姿勢が評価され始めたことで、これまでの体制を支持する勢力との対立が浮き彫りとなりました。

この頃から、斎藤氏支持層はSNS・WEBメディア、稲村氏支持層はTV・新聞と、支持層とメディアが紐づく形になったことも今回の選挙の大きな特徴です。こうして、2024年の兵庫県知事選挙は「SNS対オールドメディアの選挙」と呼ばれ始めました。

斎藤氏当選、そして。

結果的には斎藤氏が当選となりましたが、当選までの道のりにはSNSの大きな後押しがありました。代表的なのは、斎藤氏・稲村氏と同時に立候補した立花氏が、SNSやYouTubeなどを中心に斎藤氏のパワハラ疑惑を晴らす発信を行ったことです。斎藤氏バッシングの元となった報道姿勢や百条委員会の裏側の暴露などを、独自の視点で主張したこの発信は、知事選の結果を大きく左右しました。同時にSNSを中心に斎藤氏支持の声が増え、一気に世論は逆転、そして最終的に当選に至ったのです。

しかし、斎藤氏は当選となったものの、公職選挙法違反の疑惑を掛けられる事態に。選挙がすでに終わった12月現在でも、未だすべてがクリアになっていない状況が続いています。

兵庫県知事選で起きた、SNS関連の主な事象

ここからは、兵庫県知事選で起きたSNS関連の事象を整理しておきます。あくまでSNS活用に主眼を置き、客観的視点で整理した内容です。SNSの力を把握する内容として、ぜひご参考ください。

SNS力の認知拡大

今回の兵庫県知事選を通して、SNSがもつ拡散力と発信力の認知が、一般層にまで大きく広がりました。認知拡大を一層促進させたのが、選挙後にTV・新聞が行った得票数の振り返り分析です。「斎藤氏が当選した最大の理由はSNSである」とTVや新聞ではこれまで大きく取り上げなかったSNSの影響力を、いくつかのメディアが報道。この報道によってTVしか観なかった層にまで、さらにSNSの認知が広がりました。

支持者を増やした多様な発信

斎藤氏の支持者が中心となって行った、SNS・YouTube・WEBメディアなどによるさまざまな発信も、今回の兵庫知事選を象徴する事象です。演説や討論、バッシングに対する考察・反論動画の拡散により、沢山の人が興味を持ち、支持者を増やす一因となりました。

一方で稲村氏をはじめとするほかの候補者も、斎藤氏と同様にSNS・YouTubeなどによる広報戦略を活用しています。SNSの影響力は、政治家の間でもすでに周知の事実。今や国内のみならず、海外においてもその発信力を高めています。先日行われたアメリカ大統領選も、まさに斎藤氏と稲村氏とほぼ同様の構図です。政治における広報戦略をみても、今後はよりSNS・YouTube・WEBメディアの力が高まることが予想されています。

若年層の得票に影響

斎藤氏当選の最大の要因といわれる若年層の支持拡大も、SNSが起こした現象のひとつです。MBSが投開票日当日に実施した出口調査によると、10代〜30代の約6割以上は斎藤氏支持。50代の層でも斎藤氏支持が5割を超え、60代で稲村氏とほぼ同数。70代以上は稲村氏支持が優勢という結果に。斎藤氏は選挙に積極的でなかった若年層の支持を、SNSの力などを支えに伸ばすことに成功しました。

選挙行動を促すには、認知・共感だけでなく、アクション(投票)にまで導く力が必要となります。兵庫県知事選の公示から選挙までの期間は、たったの約2週間程度。このたった半月ほどの非常に短い期間でも人々を動かす力を、SNS・WEBメディアは持っていることが証明されました。

特に今回斎藤氏の支持が多かった20代〜30代は、採用活動においてもメインターゲットとなる世代。採用や事業課題をSNSの力で解決することも、方法次第では難しくはないといえるでしょう。

SNSを自社で活かすヒント

ここからは、SNSの力を自社事業に活かすヒントを解説します。SNSは中小企業でも大手・競合に負けない発信力をもつ手段のひとつです。SNSで発信するメリットや特徴を理解し、活用のヒントとしてご参考ください。

動画+テキストのパワー

兵庫知事選では特にX(旧Twitter)での、動画+テキストの投稿が多くのユーザーに拡散される現象がおきました。斎藤氏の実績や人柄を端的に訴求する内容や、メディアを通してかけられた疑いを検証する内容なども、動画+テキストでの発信が中心です。

動画+テキストの発信のメリットは、時間がないユーザーにも内容が伝わりやすく、深く知りたい場合は動画まで観て理解を深められる点にあります。自社でX(旧Twitter)やInstagramなどを活用する場合には、ぜひ参考にしたいポイントのひとつです。

若年層にリーチできる

今回の兵庫県知事選挙でも、10代〜30代までの支持率が当選を左右しましたが、SNSには若年層にリーチする力があります。事業においては、自社や自社商品を支持する若年層のファン獲得も、先々を見据えた重要なミッションのひとつです。若年層は採用の軸となる世代でもあるため、SNSを活用した訴求が今後は一層必要となるでしょう。

また、今回の兵庫県知事選挙においては、これまで選挙に行かなかった若年層がアクションを起こしたことも、見逃せないポイントです。政治に興味が薄い世代が選挙に行ったことに比べれば、購買活動を促したり、求人へのエントリーに導く方が容易ではないでしょうか。「気持ちを動かす発信」や「自分事であることを感じさせる発信」ができれば、SNSの力で若年層を動かすことも可能になります。

企業カラーを伝えやすい

SNSはさまざまな表現ができるため、企業の雰囲気やカラーを伝えやすい特徴があります。X・Instagram・TikTok・YOUTUBEなど、それぞれのプラットフォームによってコンテンツを変えるのも方法のひとつ。TikTokやXでは企業の面白い一面をコンテンツ化して発信し、YOUTUBEではリアルな従業員インタビューを発信するなど、自社の魅力を多角的に発信する方法もあります。

また、それぞれのSNSはコーポレートサイトへの貼り付けもできるため、連携させればサービスへの誘導や採用活動としての活用も可能です。多角的な企業文化の発信は、採用のミスマッチを防ぎ、企業風土に合う志望者を増やす効果があります。企業やサービスの特色・方針を上手く訴求し続けることで、SNSを介してターゲットとのつながりを深めることもできるでしょう。

SNS戦略を導入する方法

最後に、SNS戦略を自社に導入するにはどうしたら良いか。その手段について代表的な方法を3つご紹介します。

SNS戦略、運用まで自社で行う

SNSの戦略~運用までを自社で行えば、すぐにSNSの活用を始めることができます。しかし、SNSを活用して目指す効果を得るには、細かい準備や計画も必要です。具体的には、SNS戦略の企画立案・SNSの選定から運用までを自社で行うことになります。マーケティングやSNS運用の知識のある人材が社内に居れば、負担は掛かりますがすべて内省化することもできるでしょう。

SNSの活用方法はさまざまですが、一般的には発信後の効果測定と分析、分析を踏まえた改善までがワンセットです。そもそもSNSは閲覧数が伸びるまで一定の時間が必要で、ただ発信しているだけでは効果は見込めません。必ず分析して改善を繰り返すことで、効果の最大化と成果を得るまでの期間短縮を目指します。自社運用の場合は、必要人員の確保と計画的な運用が一番のハードルとなります。

一部外注する

SNS戦略の実行に必要な人員や知見が不足している場合は、SNS戦略に強い専門企業へ一部業務を外注する方法もあります。自社の企画が弱ければ企画部分だけ、運用面が弱ければ運用のみを依頼すれば、より負担なく効率の良いSNS活用が可能です。一方で自社を理解し、伴奏してくれるパートナー企業の選定も、効果を出すうえで重要なポイントとなります。

戦略立案~運用まですべて任せる

初めてのSNS活用でリスクなどが心配な場合や、これまで運用して効果がでなかった場合などは、SNS戦略~運用までをすべてマーケティング専門企業などへ任せる方法もあります。依頼先の企業にもよりますが、基本的には依頼元である企業の以降を事前にヒアリングし、設定した目的に応じた企画・運用を行うことが一般的です。

SNS運用をすべてを外注できれば、運用時のリスクヘッジはもちろん、効率的な運用や人的リソース不足の解消にも繋がります。また、運用を通して一定のノウハウを学ぶこともできるため、先々の自社運用に向けて、参考にできる部分も多いでしょう。競合よりも早く発信力をつけたい場合などにも、外部への依頼は良策です。弊社でもご相談を受けておりますので、SNS運用をご検討の際は、ぜひお気軽にお声がけください。

まとめ

今回は、兵庫県知事選挙でのSNSの影響力の解説と、SNS戦略を事業に活かすヒントを解説しました。国内外の政治・エンタメ・スポーツなどの動向をみても、SNSの影響力は日に日に増していることを実感します。企業規模を問わず少しづつ発信力を身につけることで、どんな事業にも活かせることがSNSの大きな魅力です。ぜひ今回の内容を参考に、自社でのSNS活用をご検討ください。