京都・大阪・東京などの都市圏ではここ数年、訪日外国人で街が活気に溢れています。大阪での万博開催も予定されている2025年。今年は関西を中心に、さらに多くの外国人が日本に訪れることが見込まれている状況です。この絶好のインバウンド景気を事業に活かすべく、訪日外国人を取り込むマーケティング手法を把握しておきましょう。
本記事では、訪日外国人向けの代表的なマーケティング手法を、コツや注意点とともに解説します。
訪日外国人向けマーケティングが注目されている背景
まずは、訪日外国人向けのマーケティングが注目されはじめている背景について、簡単に整理しておきます。
訪日外国人観光客の増加
日本を訪れる外国人観光客が年々増え続けていることは、訪日外国人向けのマーケティングが注目されている代表的な理由のひとつです。外国人観光客が増え続けている要因としては、円安やビザの緩和など、日本に訪れ過ごしやすい環境であることが挙げられます。また、文化や豊かな自然が注目され、日本に興味が高まっていることも、訪日外国人の増加につながっているでしょう。
JNTO(日本政府観光局)の調査によると、2023年の訪日外国人は約2,507万人。2024年は10月時点で3,300万人を超え、過去最速で年間累計3,000万人を突破しました。2025年には年間4,000万人以上の外国人観光客が訪日する見込みで、今後も右肩上がりの予想がされています。これを商機と捉え、インバウンド向けの事業展開を行う企業も増えてきている状況です。
2025年は万博開催も
京都・大阪などはもともと非常に外国人観光客が多い地域ですが、2025年には万博開催も控えており、今後はさらにインバウンドが増加する見込みです。万博へ来場する外国人観光客は約350万人。月平均に換算すると、約60万人の外国人の来場が毎月見込まれています。
2005年に開催された愛・地球博を訪れた外国人観光客が105万人であったことを踏まえると、約350万人の来場者数見込みからも、日本への注目度の高まりが感じられるのではないでしょうか。訪日外国人の増加は、京都・大阪をはじめとする関西圏はもちろん、東京などの都市圏にも広がると予想されています。新規事業として外貨の取り込みを狙う時期としては、最良な時期に差し掛かっていると言えそうです。
高齢化による国内需要の低下
日本を訪れる外国人が増えている一方で、国内経済は高齢化の影響を受けつつあります。一部高齢者を対象とした事業以外は、収益確保のために新たなサービスの展開やターゲットの拡大などが必要になってきている状況です。高齢化による需要低下を補う観点からも、インバウンドの集客や世界に向けた事業展開は必須といえます。少子高齢化の課題を抱える日本にとって外貨の獲得は、今後も注力するべきポイントのひとつとなるでしょう。
訪日外国人向けマーケティング手法
ここからは、訪日外国人の集客や宣伝に有効なマーケティング手法を紹介します。自社で訪日外国人からの注目を集めるために、まずは代表的な手法を確認しておきましょう。
HPによる集客
自社HPを外国語対応にすれば、HPによる集客も可能です。ホームページの仕様によっては自動翻訳なども利用できるため、手間や費用を掛けずに外国語対応にできる場合もあります。HPを充実させておけば、WEB広告などとの併用によって露出を上げ、集客をより効率良く行うこともできるでしょう。また、HPの表示自体を、観光客がリサーチに使用するスマホ対応にしておくことも、集客力UPのポイントです。
SNSでの発信
国内消費者と同様、SNSによるマーケティングもインバウンドに有効な手段です。YouTubeやFacebook・XやInstagramなど、自社に最適なターゲットや目的に応じたプラットフォームを活用することをおすすめします。SNSは、日本文化や食事・美しい景色などとの相性も良く、販売サイトなどと連携して簡単に販路を増やせるところも大きな利点です。多言語で発信すれば幅広いターゲットに情報を届けることができるため、費用を抑えた効果的な集客ができるでしょう。
SNSを活用する際に注意したいのは、ターゲットにあったSNSの選定です。たとえば、日本ではさほとアクティブユーザーの少ないFacebookがアメリカ人には人気であったり、中国ではWeChat(ウィーチャット/微信)やWeibo(ウェイボー/微博)など独自のSNSが普及しています。国や地域によって主流となるプラットフォームが異なるため、SNSの選定を慎重に行うことも重要なポイントです。
外国人向けサイトの活用
外国人観光客が活用する、旅行サイトや口コミサイトの活用もインバウンドの集客におすすめの手段です。たとえば、Expedia・Agoda・Hoptels.com・Airbnbなどの宿泊先予約サイトなどは、宿泊施設の集客はもちろん、アクティビティや送迎などの集客を行うこともできます。自社サービスとの相性によっては、効果的に集客できるでしょう。
また、欧米の観光客の利用が多い旅行サイト「TripAdvisor(トリップアドバイザー)」や、中国人観光客の利用が多い「大衆点評」や「fliggy」などの口コミサイトも集客に有効なツールとなります。店舗やサービスなどを登録し口コミが増えることで、少しづつ認知度を向上させ、集客につなげることが可能です。良い評価を集められるようサービスクオリティーを保つ努力をすることが、口コミサイトで集客する際のカギとなります。
チラシやポスターでの宣伝
外国人観光客が集まる施設にチラシやポスターを配布し、集客する方法もあります。一見アナログな手段に思えますが、民泊や飲食店・観光スポットにポスターなどを貼るだけでも、意外と注目を集めることが可能です。チラシ・ポスターからHPやWEBサイトへ誘導すれば、より深いアプローチもできるでしょう。
訪日外国人向けマーケティングの注意点
訪日外国人向けマーケティングには、注意しておきたいポイントもあります。ここでは代表的な注意点を解説します。
問い合わせ体制の確立
WEBサイトや広告をみた外国人からの、問い合わせに対応する仕組みづくりが必要になります。ターゲットの母国語や英語での対応ができるよう、事前に体制を整えておくことが大切です。基本的な質問対応のみで完結する内容なら、「よくある質問」などの題目でHPなどに記載しておくと利便性も向上します。提供するサービスや事業にあわせた問い合わせ体制についても、事前にきちんと整えておきましょう。
価格設定は慎重に
提供するサービスや事業の価格は、ターゲットの経済状況を踏まえて設定することをおすすめします。現状は大きく円安に触れているため、国内の感覚で値付けをすると安すぎる場合も少なくありません。商品やサービスのブランディングも考慮したうえで、為替に応じた価格設定にしておくことも方法のひとつです。
決済方法にも配慮する
海外ではキャッシュレス決済が浸透している国も多いため、ターゲットが支払いやすい決済方法を整えておくことも非常に大切です。実際に外国人観光客の多くは、キャッシュレス決済に対応していない所が日本に多いことを、不便に感じているといいます。スムーズな決済方法を整えるだけでも、購買へのアクションを促すことができるでしょう。
訪日外国人向けマーケティング成功のコツ
最後に、訪日外国人向けマーケティングを成功に導くコツを解説します。
ターゲットを絞る
訪日外国人向けマーケティングに初めて着手する際は、まずはターゲットをできるだけ絞って実施することをおすすめします。言語表示や問い合わせ対応、決済手段の準備など、外国人向けの集客は手間も掛かるものです。まずはターゲットを絞って発信の質を上げ、体制を整えることを意識しましょう。ターゲットを狭めることでメッセージも届きやすくなり、効果を上げやすくなることも大きなメリットです。
自社HPの充実
訪日外国人向けマーケティングとはいえ、自社HPは内容を充実させておくことが重要です。HPの仕様によっては自動翻訳なども活用できるため、コンテンツが充実していればそれだけで集客に活用できます。サービスや商品の概要がしっかりと書いてあれば信頼度向上にもつながり、利用や購買を促進することが可能です。
専門家や外国人からアドバイスを得る
訪日外国人向けのマーケティングやサービス・商品について、第三者からのアドバイスを参考にするのも良策です。単純な翻訳ミスや利用や購入の際の違和感を発見し、早期に修正できるメリットがあります。マーケティングの仕組みや手段自体に問題があれば効果が得られないため、事前に専門家のアドバイスを参考にするのも良い方法です。多角的にチェックできる体制があれば、効率の良い集客を実現できるでしょう。
まとめ
今回は、訪日外国人向けの代表的なマーケティング手法を、コツや注意点とともに解説しました。訪日外国人向けの事業は、参入企業もまだまだ少なく、豊富なのびしろのある領域です。京都・大阪を始めとした関西圏は、まさにこれからインバウンド全盛を迎えようとしています。まずは少しづつ基本に忠実に、訪日外国人向けマーケティングに着手されることをおすすめします。