2025年7月20日に投開票が行われた、第27回参議院選挙。今回の選挙では自民・公明の与党が議席の過半数を確保できず、それぞれ過去最小水準の得票数となりました。その一方で注目されたのが、国民民主や参政党など新興政党の台頭です。この新興政党と与党の間には、一体どんな違いがあったのか、政策面からではなくマーケティングの視点から読み解きます。
本記事では、マーケティングを軸とした参議院選挙結果の振り返りと、そこから学ぶ企業の効果的なSNS活用法について解説します。
2025年参院選挙のまとめ
まずは簡単に、2025年参院選挙で起きたことをまとめておきます。
参院選の結果と概要
自民党と公明党が議席の過半数を確保できず、大きく勢力図が変わることとなった今回の参院選。自民党はこれまでの114議席から13議席を、公明党は27議席から5議席を失い、与党全体として過半数を下回る結果となりました。
その代わりに国民民主や参政党が躍進。国民民主党は9議席から22議席へ、参政党は2議席から15議席へと票を伸ばし、参議院の勢力図がわずかに野党に傾く結果となりました。
年齢層によって違う支持政党
今回の選挙結果は、もちろん政治的な面が影響していますが、マーケティングからの視点でみても非常に興味深い点があります。それは、有権者の情報取得方法が、支持政党に大いに影響を与えている傾向がデータからよみとれることです。
TV・新聞など従来のメディアから情報を得る高齢者層と、SNSを始めとしたインターネットメディアから主に情報を得る若年層。年齢層のグラデーションに伴って支持政党も同様に変化しているのは、昨年行われた兵庫県知事選でもみられた、近年の特徴的な現象のひとつです。
「SNS」が参院選のキーワードに
なかでも特に若年層の政党選択に影響したのが、X、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなどの幅広いSNSです。NHKの調査データをみても、SNSや動画視聴者層の多くは、今回支持を伸ばした2政党を含む野党を支持していることがわかります。
また、SNSの活用頻度に個人差がある、50代を境に支持政党が変化していることも、マーケティング視点でみると大変興味深いポイントです。つまりはTVや雑誌からSNSへと、信頼されるメディアが移り変わっているということ。若年層とこれまで選挙のアクションを取らなかった層がSNSによって動いたことで、今回の選挙結果は大きく左右されたことがわかります。
得票が伸びた政党の、SNS活用法ポイントとは?
政党によってSNSの活用法や戦略は異なりますが、得票が伸びた政党には大きく4つの共通点があります。ここでは今回の参院選で注目を集める要因となった、マーケティングのポイントを解説します。
Xでのリアルなコミュニケーション
国民民主党や参政党などが票を伸ばした要因の一つとして、X(旧Twitter)の徹底した活用が挙げられます。参院選立候補者のXの活用率はデータのように政党によって異なりますが、与党は自民党で約82%公明党で58%程。
しかし、選挙ドットコムが調査したデータによると、今回躍進した野党2党においては、すべての立候補者が活用していることがわかります。Xの魅力は有権者とリアルタイムでコミュニケーションできるため、拡散力や発信力があること。また適切な対話ができれば信頼を得やすいことも、大きな強みです。疑問や批判、デマにもすぐに対応でき、誤解を解消できるXの活用は、得票を大きく伸ばす要因になったと考えられます。
YouTubeのさまざまな活用法
近年の選挙では、YouTubeの活用も支持層拡大に大きな影響を与えています。なかでも参政党は、登録者数を1カ月で約14万人、参院選期間中だけで約9万7千人増やすなど、日を追うごとに注目度を高めました。登録者数を増やす要因となったのは、演説の動画配信とYouTubeショートの活用です。YouTubeショートは60秒の短い、TikTokに慣れ親しんだ若年層に特に親和性の高い動画コンテンツ。忙しいビジネス層も閲覧しやすい短時間動画を発信したことが、登録者増を生み認知度を大きく伸ばす要因となったと考えられます。
また、国民民主党は代表自らがチャンネルを開設し、発信したことで動画視聴者を拡大する戦略をとりました。代表のチャンネル登録者数は約60万人。非常に多くの登録者を集めたことで、選挙に行ったことが無い層のアクションを促したと考えられます。その他無党派層の複数候補もYouTubeチャンネルを開設しており、選挙前だけでなく通年で支持を取り込む戦略が主流となっている状況です。
キャッチコピーの力
今回の参院選の争点であった「減税」「外国人問題」。この課題に対して有権者に一言で回答する、キャッチコピーも選挙を通して非常に印象的でした。国民民主党は「手取りを増やす夏。」・参政党は「日本人ファースト」です。
端的で具体的なキャッチコピーを作るメリットは、政党の方針が簡単に広く伝わることと、SNSなどでも使いやすいことにあります。票を伸ばした政党以外のキャッチコピーを思い出せる方は意外と少ないはず。自社のSNS運用でも、積極的に取り入れたいポイントのひとつです。
インフルエンサーによる拡散
2025年の参院選では、ミュージシャンや俳優、YouTubeなどで活躍するインフルエンサーによる選挙に関する発信が多かったことも、非常に印象的に映りました。その影響もあったのか、今回の投票率は58.51%と2022年の参院選から6.46ポイント伸びる結果に。若い層とこれまで選挙にいかなかった層への情報発信は、今後の選挙結果にも影響することが見込まれています。
特に発信が注目されたのは、政治系以外のインフルエンサーの発信です。ビジネス系やグルメ系、エンタメ系、格闘技系のYouTubeなどでも選挙行動を促すメッセージをしており、幅広い層に政治の意識が広がりました。20代〜30代を中心に約500万人の登録者をもつヒカルチャンネルでは、コメ不足の問題や外国人による土地購入問題などに絡め、同様の発信をしています。今回の参院選が注目を浴びたのは、各方面からのインフルエンサーによる発信も要因となったと考えられます。
自社で使える、効果的なSNS活用法
このように今回の参院選では、SNSの力が大きく結果を左右しました。では、企業がこのSNSの力をを取り入れるにはどうしたらいいのでしょうか。最後に、自社で使える、効果的なSNS活用法について解説します。
プロモーションや採用への動画活用
商品や製品のプロモーションや、自社の魅力を伝える採用などに動画SNSでの発信は非常に有効です。商品や製品、人や組織の魅力を動画などで伝えれば、雰囲気や音を含めた多角的な情報を簡単に伝えることができます。
ショート動画や長い動画を使い分けて、政党の支持者を増やしたのがまさに動画の力です。ホームページや複数のSNSに連携すれば、より幅広く効果的に求職者やファン層を取り込めるでしょう。
自社組織や商品のブランディング
自社や商品のブランディングにも、SNSは非常に有効です。「信頼感」「楽しさ」「最新」など発信したいイメージを明確にして、ターゲットに向けた発信をすることが重要になります。政治家がXで政策に関する無駄のない回答をするシビアな一面とともに、YouTubeで親しみやすい雰囲気を訴求することも、支持を集めるためのマーケティング手法のひとつです。
ブランディングを確立できれば商品に価値を感じて貰いやすくなり、自社への信頼を集めやすくなります。信頼が集められれば商品やサービスが売りやすくなるだけでなく、採用力の強化につなげることも可能です。キャッチコピーを上手く使ったブランディング法などを活用し、効果的に認知度を向上させましょう。
事前計画のうえ、最適なSNSで訴求
SNSマーケティングを効果的に実施するには、事前の計画とSNSの選定が非常に重要です。SNS活用の目的・ゴール・期間、ターゲット・コンテンツ・運用方法などを事前に決め、ゴールを達成するために最適なSNSプラットフォームを選びます。
たとえば、高卒〜20代前半に向けた訴求ならTikTok・Instagram・LINE、30代後半以降の経験豊富な層を狙うならfacebookやYouTubeのように、ターゲット層の利用率が高いSNSを選定することが大切です。SNS選定や発信方法などの戦略は、効果を左右する重要なタスクのひとつだといえます。もし事前の計画や運用方法の選定に不安がある場合は、弊社のようなマーケティング専門の会社へ一度相談してみると、対策手段をみつけられる場合もあるでしょう。
まとめ
今回は、参議院選挙結果をマーケティング視点で振り返り、そこから学ぶ企業の効果的なSNS活用法について解説しました。少し難しいテーマでしたが、楽しんでいただけましたでしょうか。政治も今やSNS無しでは語れない時代となってきましたが、SNSを味方にする必要があるのは、企業においても同じこと。幅広い用途で活用できるSNSマーケティングをぜひ楽しんで理解し、少しづつでも自社事業に取り入れてみることをおすすめします。
私たちnola株式会社は総合デザインコンサルティング会社として、SNSやWEBを活用した企業ブランディングや広告戦略など、幅広いマーケティング戦略のサポートを提供しています。「事前計画やSNS選定が難しい」という場合も、組織やゴールに応じたご協力が可能です。お困りのことがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。